9月19日、第29回勉強会が開催され、キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之さんから、「AIIBと中国戦略」をテーマにお話しいただきました。瀬口さんは、日本銀行北京事務所長などを経て、現在はキヤノングローバル戦略研究所の研究主幹を務めていらっしゃいます。
本題に入る前に、昨今の中国経済に対する懸念の高まりを踏まえ、足元の中国経済情勢についてご説明いただきました。
習近平政権が目指す「新常態」(ニューノーマル)とは、二つのアブノーマルからの脱却(①速すぎた成長速度の適正化、②不健全な経済構造の筋肉質化)であり、2012年以降、実質成長率は安定した状態を保持しながら緩やかに減速していると指摘。不安要素はあるものの、足元の中国経済は安定を持続しており、当面失速する可能性は極めて低いとの見方を示されました。
また、中国は「新常態」の下、今後も内需拡大、賃金上昇が続くため、中長期的には輸入増大・輸出競争力低下傾向が続くとみられ、輸出競争力を伸ばすにはイノベーション力に優れる日本と組むことであり、日本としても、商売に優れる中国と組むことはメリットが大きく、ウインウインの関係が構築できると述べました。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)については、中国は当初、「中国の、中国による、中国のための」AIIBを目指していたところ、予想を上回って多くの国が参加を表明したため、本格的な国際開発銀行を設立する重要性に目覚めたと説明。現在はグローバルスタンダードを満たす国際開発銀行にしようとしており、日本の参加を強く希望するようになったということです。既存の国際開発銀行の運営において豊富な経験を有する日本は、組織運営のガバナンス、透明性の確保等の面で大きく貢献できると述べました。
瀬口さんは最後に、「中国の発展は日本発展、日本の発展は中国の発展」と述べて講演を締めくくりました。
※瀬口清之さんの著書『日本人が中国を嫌いになれないこれだけの理由』(2014年12月)が日経BP社から発売されています。ぜひお手にとってご覧ください。