『恵恵 日中の海を越えた愛』

日中関係が厳しいこの頃、中国人女子留学生と日本人青年との深い愛情に結ばれた物語『恵恵』に強く心を打たれました。

当時、関西学院大学の修士課程に在学中の恵恵と、関西学院大学卒業後、高校教師をしている健太が出会い、愛情を育み、婚約をします。修士課程を卒業した恵恵は北京に帰り、北京で乳癌が見つかります。それを知った健太は日本での仕事を辞め、恵恵のいる北京に飛んでいきます。二人は入籍し、健太は恵恵の看病に徹します。恵恵は2011年に亡くなりますが、その間の二人の心の交流、看護の様子は、この本『恵恵』では、健太の手記、恵恵の手記、恵恵の母親の付楠の手記を通して時間の経過とともに語られています。

中国語で書かれた母親の手記の翻訳をしたのは、泉京鹿さんです。泉京鹿さんは、中国の現代小説の翻訳を多く手掛けている方です。

         (文・横堀雅子)

          (文芸春秋刊 1400円+税)