上海国際問題研究院での座談会

第一セッション「尖閣(釣魚島)列島の歴史と現状」

 日本側は村田忠禧氏が尖閣諸島の歴史的経緯について各種資料を用いて説明し、大切なのは「面子」ではなく、「真実・真理」であると述べました。続いて、上海社会科学院日本研究センター常務副主任の金永明氏が、島の法的問題について分析し、学者間の交流を行って事実を説明することが重要だと指摘しました。

 この後、自由討論が行われ、以下のような意見が出されました。

〈中国側の発言〉

  • 中日共同の歴史研究をしたらどうか。
  • 入口論と出口論の2つの方法論がある中で、中日関係は出口論をとらなければならない。まずは別の方面からの協力を考えるべきだ。
  • 日本政府の「尖閣諸島は日本固有の領土」という主張は理に合わない。72年に返還されたのは施政権であり、固有の領土というのはおかしく、納得できない。

〈日本側の発言〉

  •  「島」の問題については「共同管理論」を提案したい。日中の平和友好の象徴として管理していく。これは、領土問題の平和的解決法として人類に貢献することができる。したがって、昨今の島問題についてあまり悲観せず、これをチャンスととらえて両国が努力していくべき。
  • 意見が違えば違うほど話し合いをする必要がある。話し合いの席にも着かない日本政府の態度は問題だ。
  • 日中関係修復の方法として、欧州に倣い、紛争のある海域の資源共同開発によって経済利益を分かち合うと同時に、平和な関係を築き、東アジアに地域協力の枠組みを構築することを提案したい。これは途方もなく困難ではあるが、不可能とは言い切れない。むしろ、こうした構想によってのみ、日中両国は面子を失うことなく、上げた拳を下ろすことができる。

第二セッション「最近の日本の政治動向と中日関係」

 日本側は、『中央公論』元編集長の近藤大博氏が現行の第2次安部政権に関し、アベノミクスや対米・対アジア政策、憲法改正等について説明しました。→近藤氏報告

 上海市人民政府華僑事務弁公室副主任の蔡建国氏は、中国において日本の右傾化への懸念や日本に対する不信感が高まっているとした上で、引っ越すことができない隣国関係にある中日は、新型の関係を構築する必要があると指摘しました。

 この後、自由討論が行われ、以下のような意見が出されました。

〈中国側の発言〉

  • 中日の交流の基礎は深い。官ではなく民にある。
  • 「島」の問題は一部であり、両国関係の全てではない。他に環境問題等、中日が考えるべき問題はたくさんある。
  • 政治家は責任をもって発言すべき。
  • 日本の書店には中国批判の書籍が多すぎる。日本のマスコミは中国国内の小さなことも大きく報道する。
  • 日本は若い人の力が足りないのではないか。

〈日本側の発言〉

  • 日本の教育は政治中立の立場から教員は政治には触れない。また、入試では現代史にかかわる問題があまり出題されないため、子どもたちはその分野をあまり勉強しない。
  • 確かに、いま、日本の若者は若干内向きの傾向にあるものの、リスクをとって海外へ出る人も少なくなく、北京や上海で独自の草の根の交流を行っている人もたくさんいる。

 最後に、南村氏と上海市日本学会常務副会長の陳永明氏が総括を行い、信頼できる友人を作り、そこで議論をして解決策を模索していくこと、温故知新の精神で、明るい未来に向って手を携えていくことを提案して、座談会は終了しました。