中国国際友人研究会との座談会

 中国側の挨拶では、呉従勇副会長が、昨年は中日国交正常化40周年の記念の年であったが「好事魔多し」の例えのごとく、「島」の問題により両国間の様々なイベントがキャンセルになり国民は心を痛めていると指摘し、「政治家が両国関係に不利なことを言ったり、やったりしないことが重要だ。中日関係の好転は双方の願いであり、難局打開に力を尽くしたい」と述べました。

 これを受けて当会の横堀代表は、日中関係は1972年以来最も悪い状態にあるが、日中友好は今後の両国のために重要であるとした上で、「国交正常化までには長い民間の努力があった。『島』の問題は敏感な問題であるが、なんとか解決の道を探りたい。今日は双方胸襟を開いて率直に話したい」と呼びかけました。

 この後、中国側からは王泰平氏、日本側からは野田英二郎氏、南村志郎氏がそれぞれ問題提起を行いました。

 野田氏は、政府間関係はかつてないほど冷え込んでいると指摘した上で、歴史認識、日米関係、民間交流等、多方面から日中関係の現状について分析し、尖閣問題については意見が違うからこそ話し合うべきだと述べました。

 王泰平氏は、中日関係は①1949~72年:戦争状態、②72~78年:ハネムーン期、③78~98年:大きな発展、④90年代半ば~:転換期の4つの段階に分けられるとし、各段階について詳細な説明と分析を行いました。特に、④の段階において、中日関係は特殊な関係から普通の関係へと移行し、冷戦終結・世代交代・力関係の変化等により新しい局面に入っていると強調。相手国の理解・位置づけを現実に即して調整する必要があると指摘しました。その上で、「島」問題については、日本政府は領土問題が存在することを認めること、日本の一方的管理から中日のダブル管理へと移行することを求めました。また、中国は、日本の歴史に対する態度に注目していることも強調しました。

 最後に南村氏は、日本は被害者意識が強くて加害者意識が薄く、そのために様々な火種を残してきたと述べ、歴史認識の大切さを強調しました。また、日中間において、民間の力がなくなったこと、双方をつなぐ人材がいなくなったことを指摘。さらに、中国のメディアに対しては、荒唐無稽の反日ドラマが多すぎると意見しました。

 後半は自由討論が行われ、日中双方活発な意見が飛び交いました。

〈中国側の発言〉

  • 日本には(政府関係者をはじめとし)誠意ある発言をお願いしたい。
  •  「日中未来の会」のメンバーを見るに、年配の方が多く、若い力が足りないのではないかと思う。日中関係の改善に若い力をどう活かしていくかを考えてほしい。
  • 先ほど南村先生の発言に、中国は荒唐無稽の反日ドラマが多すぎるとの指摘があったが、日本のサブカルチャーは、キテレツではないからこそもっと危ないと思う。美しい映像や説得力ある内容に日本の若者たちは無意識に染まり、その歴史認識を形成しているのではないだろうか。
  • 日中の主流メディアの間には大きな相違があり、それぞれが自分の意見を主張するだけでなかなか建設的な議論にはならない。その一方、中国の日本語で発信するメディア(人民中国、中国国際放送局、人民網日本語版等)や日本の中国語で発信するメディア(共同通信中国語版、朝日新聞中国語版等)は、異文化交流メディアとして、相互理解を深めるという前提の上で自国及び相手国のニュースを伝えている。よって、こうしたメディア間の交流は、大変有意義なものであると考える。
  • 中国の若者はファッション、観光等をはじめとし、日本への関心は強い。日本人に対して、①軍国主義、②やさしく礼儀正しいという2つのイメージがある。
  • 荒唐無稽な反日ドラマについては当局が規制に乗り出した。

〈日本側の発言〉

  • 中国は情報公開に積極的になってほしい。例えば、「島」問題の争点となっている「棚上げ論」について、中国は「竹入メモ」(竹入・周恩来会談)をはじめとする日本側が公開している資料をもとに主張しているが、中国にも資料があるはずで、それをきちんと公開すべき。そうすればいろんな事実がはっきりする。両国がきちんと情報公開をした上で、日中共通の資料集を作ってはどうだろうか。
  • 正しい世論をつくっていくことが大切だ。昨今の国民感情の悪化をみると、マスコミの罪は大きい。
  • 確かに国民感情は悪化しているが、心理的な動きというものは変わりやすい。本当は平和を望んでいる。心がある交流を行うことが必要。

 最後に、呉従勇氏と横堀代表が、「建設的な提案がたくさん出た。これから前向きに実現していきたい」と締めくくり、座談会は終了しました。