日中友好の基礎は民間にあり ――政治に左右されない民間交流を目指して

日中未来の会は、日本と中国の相互理解と友好の促進を目指し、2013年1月に結成されました。

当時の日中間は、前年の日本政府による尖閣諸島の国有化を契機にして領有権を巡って厳しく対立し、その関係は1972年の国交正常化以来の最悪の状態にありました。それまでの両国関係は、たとえ政治面は冷え込んでいても経済(民間)交流は熱く活発に働いていたという「政冷経熱」の状況で収まっていたのですが、尖閣諸島問題は経済活動にも影響が及び、政治活動も経済活動も共に冷える「政冷経冷」の関係に陥りました。そして何よりも問題なのは、両国のマスコミがそれぞれ相手国のネガティブなニュースばかりを取り上げるようになった影響もあり、お互いの国民感情が極度に悪化し、民間交流そのものまでもが著しく阻害されるようになったことでした。

このような日中関係の事態を憂慮した有志達が集まり、原点に戻って、中国に対する理解を深め、中国の各界の人々との直接の交流を通して、具体的に日中関係改善のために、わずかなりとも貢献することを目指して、日中未来の会を発足し、2016年2月にはNPO法人の認証を受けました。

現在、会員は50名ほどで、仕事上中国との関わりがある方、中国で生活経験があった方、中国の人と親しい友人関係にある方等々、中国に何らかの関わりのある方々が過半ですが、そのような関わり経験がなくても、中国に関心を抱いて参加される方も多くいます。ことに最近は、時代の趨勢に敏感な若い世代が増えています。

中国理解を深め、直接対話を重視

私たちは活動をする上で、「中国に対する理解を深めること」、「中国の人々と直接対話をすること」を大切にしており、中国に関する勉強会、訪中団の派遣、シンポジウム参加などを定期的に行っています。勉強会は毎月開催しており、これが私たちの活動の基盤となっています。テーマは政治、経済、文化、社会などあらゆる分野に及びます。各分野の専門家を招いてレクチャーを受け、その後自由討議が行われ、更には勉強会終了後の懇談会で、飲みつまみしながら熱心な論議を続けることもあります。ここには、テレビや新聞だけでは知り得ない中国の現状についての理解を深める場があります。

また、毎年1回行っている訪中活動では直接対話を重視しており、中国の枢要な組織・機関との交流を続けています。お互いに率直に胸襟を開いて、自ら思うことを中国側に伝えると同時に中国側の意見を聞き、共に現在の日中関係を考え、将来の日中関係の有り様を模索する作業を行っています。率直に語ることなくしては真の信頼関係は構築し得ないものでしょう。こうした活動を通して、中国の人々との信頼構築に努めています。

昨年8月には日中国交回復45周年を記念して、人民大会堂(日本の国会議事堂に当たります)で開催された中国社会科学院主催のシンポジウムへの招待を受け、15名が参加し、更に南村志郎代表、近藤大博代表代行がパネリストとして意見発表を行いました。これは、両国間の交流は二輪車の如くで、一方には政府間の交渉があり、他方には民間交流が必要だとの私たちの主張が中国からも評価された結果だと理解しています。

言葉から見る文化背景

昨年9月より「おもしろ中国語講座」を開設しました。これは語学講座でありながら、言語の背景にある、日本・中国それぞれの社会・文化観の異同にも触れるユニークなレッッスンで、単なる言葉の学習を超えた学び場として好評を博しています。

過去を振り返り、未来へつなぐ

中国の人々と対話する上で欠かせない要素として、歴史問題があります。日中間には二千年の長きにわたる交流の歴史があり、そうした中国との関わりなくしては今の日本の、社会文化はあり得ません。ところが、明治維新以降、その対外拡張政策により日本は中国を侵略するという不幸な歴史をもたらしました。私たちは歴史を正しく理解し、「(日中は)再び戦争をしてはならない」という固い信念の上に立って、日中の未来をどう構築するかを考えています。

1972年の日中国交正常化は、幾多の困難を乗り越えて実現しました。これは、政治家たちの英断だけでなく、コツコツと続けてきた民間の努力があってこそ成し遂げられたものです。ここには、現在の日中関係、関係改善を考える上で大きなヒントがあります。

日中未来の会には、国交正常化以前から各方面で日中友好に尽力してきた人々が多く参加しています。当時を振り返り今に生かしていきたいと、私たちは、若い人たちに日中の民間交流史を伝えていく活動も始めています。

力強い民間交流を

2013年の結成時に比べると、日中関係は改善の兆しがみえてきました。しかしまだまだ政治面では対立が絶えません。昨今の日中関係は、政治面での対立がすぐに国民感情に反映されてしまいます。

国交正常化を民間の力が後押ししたように、日中友好の基礎は民間にあります。これは中国の人々と対話をしてきて、共通の認識でもあります。民間が動かなければ日中関係の改善はありません。私たちは、中国の人々との対話を重ね、信頼関係を構築して、政治に左右されない強固な交流関係をつくりあげていきたいと考えています。

皆さんのご参加を募ります

私たち日中未来の会は、日中の明日を考える方であるならば、どなたでも参加できるオープンな組織です。ご興味のある方はぜひ一度勉強会に足をお運びください。

◇◇月例勉強会・おもしろ中国語講座◇◇

  • 日時:毎月第3土曜日

おもしろ中国語講座 13:45~14:45

月例勉強会 15:00~17:00

  • 場所:東京華僑会館7階(JR新橋駅から徒歩約5分)

詳細はHPをご覧ください。http://japanchina-mirai.com/

(『市民活動のひろば』2018年3月号掲載)