第36回勉強会レポート

今回の勉強会は、二人の講師による特色あるレポートとなった。

最初は、終了したばかりの第12期全国人民代表大会(全人代)第4回会議について、日本のメディアではあまり報道されなかったエピソードを中国通信社の薛永祥・前社長にお願いした。もう一人は、元北京放送アナウンサーで、日本滞在19年のフリージャーナリスト張景子さんに、日本の主に中国報道に関する印象や感想をうかがった。

薛さんは全人代初日に行われた李克強首相による「政府活動報告」で多くの「読み間違い」があったとメディアに指摘された問題に関し、ビデオや文字を基にその内容を詳しく分析した。その結果、①文章の一部を読み飛ばしたあと、正しく読み直した②文章の一部を読み飛ばし、訂正しなかった③一部の文字(例えば「了」や「都」など)を加えて読んだが、意味には変わりはなかったー―の3種類があったことが分かった。

1時間50分、A4版で36ページの演説で、『朝日新聞』の報道では30回以上、薛さんの計算では約60回もの「読み間違い」があったが、内容を点検するすると政策に関わる大きな問題はなく、単なる不注意によるものと思われる。しかし、表情や顔つきから、落ち着かず、焦っていたように感じられた、という。

そして閉会直前に高得票で採択された「政府活動報告」では61カ所が修正された。これは過去最多であった。主として環境保護や省エネ、海洋権益、国防力整備、高齢化対応、地方の保護(縄張り)の打破、新しい型の官産関係、農産物価格形成のメカニズムなどが原案に追加された。

終了後開催された李首相の記者会見では、李首相の表情は明るくなり、生き生きとしていた。大会開催中に何らかの変化があったかもしれないという外国の報道もあった。

張景子さんは、日本のマスコミの中国報道が「負の面ばかりを指摘し、偏っている」とし、反日デモや「暴買い」などの例を挙げた。最近、和歌山県白浜で会った中国から来た若い女性の例をあげ、「若い人たちは日本の普通のおばさんが心から温かい対応をしてくれたかとに感動し、日本のすべてが好きと言っていた」という。マスコミがこうした世論を伝えて行けば日中友好をけん引できるだろう、と述べた。

また最近の日本のマスコミが、政府の圧力を受けて有名なキャスターが降板するようなことが起こっていると思われるのはとても心配とし、「中国にもさまざまな問題があるが、日本のマスコミの偏向は注意が必要だ」と述べた。

この両氏の報告を巡り、参加者から数々の意見や疑問が出され、時間が足りないほどだった。

(文責・横堀)