中国のインテリ層は激しく批判 朝鮮核実験に対する中国外交の無策

北朝鮮がもう一度核実験を実施したら、曲がりなりにも中国は対北朝鮮外交を本格的に変化させていくだろう。現在、北朝鮮の最高指導者である金正恩は、自身が核実験を行ってその契機を作ろうとしている。さらに核実験を重ねれば中朝関係は劇的に変化、中国は重い荷物を降ろし、北朝鮮も自滅していくかもしれない。(在北京ジャーナリスト 陳言)

 2011年3月に、東京電力福島原子力発電所で事故が発生してから、中国では塩が放射能防止に役立つという事実無根の噂が飛び交い、一時「塩騒動」が各地に出現した。

 2月12日、中朝国境のすぐ近くで、北朝鮮が公然と核実験をした。にもかかわらず、中国ではたまたま春節(旧正月)に当たることもあってか新聞雑誌などは休んでおり、ほとんど情報はない。わずかに外交部スポークスマンの核実験に対する批判的な発言がテレビから伝わってきただけだ。こんなに近くで人為的に放射能を放出されたら、今度こそ本格的な「塩騒動」が起きても不思議ではない。しかし騒動はなかったし、一般市民から北朝鮮に対する批判の声もあまり聞かれない。

 楊潔○(竹冠にがんだれに虎、ヤン・ジエチー)外相は、北朝鮮による今回の核実験に「断固として」反対すると述べたに留まっているが、2006年、2009年の核実験と違って、中国のインテリは異口同音に北朝鮮を厳しく批判し、中国政府の朝鮮外交の無策もあわせて批判している。今後、中国の対北朝鮮政策は大きく変化していくだろうと思われる。

 その象徴として、中国にとって北朝鮮は戦略的緩衝地域であるという見方を大きく変えることだろう。ただし、今すぐには北朝鮮政策を見直せないのは、北朝鮮の核兵器恫喝、対北朝鮮外交の変化による韓国、日本との関係への影響、アメリカの出方などについて、しばらく見極めがつかないからだ。

朝鮮が突然行った核実験
歓迎されない春節の花火

 2013年の春節は、2月10日だった。12日は、中国流に言えば、まだ「初三」(正月三が日)で、花火を打ち上げ、春節廟会というお祭りを参加して、親戚や旧友を訪ねる最中だった。北朝鮮は同じく春節の習慣をまだ残しているにもかかわらず、その日に公然と核実験を行った。

 中国のインテリ層の話題は、他でもなく、北朝鮮の核実験に集中した。

「中国との国境から100キロメートルぐらいのところで地下核実験をするなんて、明らかに中国に対する挑戦である。北朝鮮は南に対して巨大な軍団を構え、常に圧力をかけている。中国に対しては、核実験で威嚇している」

「北朝鮮は何の目的で核実験をしているのかはさておき、これから朝鮮の核脅威を受ける国は、韓国や日本、アメリカではなく、中国だろう。朝鮮のミサイルはアメリカ、日本を攻撃するにはまだ少し改良しないと、うまく目標には届かないが、中国には間違いなく届くのだ」

「僕は北朝鮮を取材したことがある。一般市民と話をすると、少なくとも僕たちの前では、外国が魑魅魍魎の世界だと彼らは言う。軍を誇りと見ている。これからさらに核も持つようになり、北朝鮮の国民、世論、為政者はますます鼻が高くなるのではないか」

 多くの人はこう言う。北朝鮮を弁解する人はまずおらず、中国のインテリは核実験を厳しく批判している。

政府:鮮血で結ばれた友情
世論:不確実性と戦争信仰

 中国では記事で中国と北朝鮮の関係を書く場合、「鮮血で結ばれた友情」という言葉をよく使う。一方、インテリ層には、北朝鮮ほど豹変し、不確実で常に戦争を仕掛けようとする国はないと思われている。日本では中国政府が言っていることはよく報道されているが、中国インテリ層の北朝鮮に対する不信については、ほとんど報道されていないと筆者は思う。

 歴史的に見ても、歴代の中国政府は朝鮮半島重視政策を取ってきた。戦前、日本は朝鮮を併合してから、初めて中国へ全面戦争を仕掛けてきた。朝鮮半島との関係は、ベトナム、ラオス、ミャンマーなど南の国との関係よりずっと重要であり、時には日本以上に重要であった。

 しかも1950年代に起こった朝鮮戦争は、中国が直接参戦し、北朝鮮と一緒に戦った。そこで「鮮血で結ばれた友情」という言葉が中国で使われるのだ。

 一方、北朝鮮も、中国にとっての自国の戦略的重要性を十分心得ている。中国を裏切るような行動を取っても、最終的には中国が目をつぶることをよく知っている。朝鮮戦争の後に起こった中ソ分裂の際、北朝鮮は基本的にソ連側に立ち、中国を裏切り続けていた。しかし、中国はずっとそれを見てみないふりをし、北朝鮮との友情を重視にした。

 西側の国々では、よく北朝鮮は中国の顔色を見て行動していると報道し、中国に表立って北朝鮮の乱暴な行動を制止してもらいたいと常に期待している。しかし中国と朝鮮の歴史から見ると、中国の戦略を逆手に取って自国の野心を最大化していく北朝鮮が、中国の意向で行動することなど、初めからなかったのである。

 突然仕掛けた朝鮮南北統一戦争(朝鮮戦争)、ソ連一辺倒、アメリカだけ重視する外交路線、ミサイル発射、核実験などなど、北朝鮮のすべての行動は、中国にとって制御は不可能であり、この国はきわめて予測しにくいと中国政府も思っているはずである。

「ソウルを火の海にする」
「韓国が北朝鮮制裁に加われば戦争」

など、北朝鮮の政府高官の恫喝は、中国の新聞にも掲載されている。常に戦争を仕掛けることで恐喝する国だと、多くの中国人はそのように北朝鮮を見ている。

 中国社会では、北朝鮮との「鮮血で結ばれた友情」というより、戦争を信仰し、常に戦争することを恫喝の道具として使う北朝鮮のイメージが強い。また北朝鮮が改革開放を拒否し、(アメリカ、日本)帝国主義と(中国)修正主義に反対することも知っている。「鮮血で結ばれた友情」は、ただの虚構である。

北朝鮮からの圧力に
大人しかった中国世論

  虚構であるはずの「鮮血で結ばれた友情」は、中国で長い間にわたって喧伝され、北朝鮮が中国の修正主義に反対する主張をしていることについては、あえて公にしなかった。また本当の北朝鮮の状況を報告することさえもなかった。

 10年前の出来事だった。軍事専門誌『戦略と管理』は2003年第5号で、中国共産党中央党校国際研究所の張○(王へんに連)瑰(チェン・レンクイ)教授の北朝鮮関連の論文を掲載した。張教授は、1960年代に北朝鮮に留学もしている朝鮮半島の専門家である。その2003年の論文では、北朝鮮は常に核保有をしないと言いながら、核を持つために粛々と動いており、いずれは核を持ち、東アジアの平和に悪影響を及ぼすだろうと論じた。2006年に核実験を行う3年前のことだった。

 北朝鮮は張論文に対して猛反発し、雑誌編集長の更迭、論文作者の厳罰を強く求めた。後に同誌は編集体制を変え、張教授もそれ以降ほとんど朝鮮関連の論文を公表しなくなった。北朝鮮が中国の一雑誌社や研究所の研究員を直接処罰することはありえない。どこかを動かして、圧力をかけて実現したと思われる。

 北朝鮮は常に中国に対して、優位性を持っていた。1945年以降、朝鮮の中では内ゲバが行われ、まず南派が排除され、次にソ連派も窓際族となり、中国の朝鮮族の出身者、しかも延安時代から中国共産党の一員として抗日戦争に参加し、朝鮮統一のために半島に帰った延安派は、内ゲバの中で粛清されていく。何人かは中国に逃げ帰ったが、金日成の粛清に対して、中国はほとんど何も言わなかった。

 中ソ対立の際に北朝鮮が常にソ連側に立ち、中国を厳しく批判したことも、中国国内ではほとんど報道されなかった。また現在も北朝鮮で時々行われている「修正主義」批判についえも、中国国内ではひたすら隠している。

  北朝鮮は外国が中国に攻め入る前の緩衝地に当たるため、中国は北朝鮮に対して寛大で、世論は大人しかった。

失われた緩衝戦略としての意味
飼い犬に噛まれる新しい可能性

「鮮血で結ばれた友情」という虚構を維持する背後には、先にも言及した朝鮮半島を緩衝地域にしたいという地政学的戦略を、歴史的に中国が取ってきたことがある。ただし現代の世界軍事では地政学的戦略の意味が薄くなり、緩衝戦略自体は意味を失っている。中国は、北朝鮮に対する外交を、これから変えなければならなくなっている。

 歴史的に見て、海から中国を攻める場合、朝鮮半島は優れた橋頭堡だった。中国では、近世における日本も1950年代のアメリカも、そのように朝鮮半島を利用していたと思われている。

「朝鮮があってこそ、中国は直接的に南朝鮮(韓国)、その南朝鮮の背後にある日本、アメリカと対峙しなくていい」

 そう主張する専門家は、口癖のようにそれを繰り返して説明してきた。

 しかし、韓国とは1992年に外交関係を樹立して、中韓経済は、中朝以上に緊密となっている。

 最近の世界を知っている中国インテリの対日世論をまとめれば、「朝鮮半島を経由して中国に攻めてくる可能性を持つ日本は、右翼の勇ましい発言、保守的な政治家の歴史認識、前都知事など地方長官による中国を挑発するための行動などを通じて、常に中国に不快感を与えているものの、戦後の民主化によって侵略性を持っているとは思えない」と整理できよう。

  アメリカはどうか。アメリカは韓国に2万人以上の軍人を駐在させているが、朝鮮戦争時と比べると、兵力は格段に少なくなった。最新鋭の軍隊を持っているアメリカといっても、一旦朝鮮半島に兵を駐屯させ、そこから中国に攻めてくる可能性はほとんどない。

  陸軍で中国と戦う国は、中国の周りにはもうない。緩衝戦略として北朝鮮を使うことはもう古いという。インテリ層を中心とする世論は、北朝鮮に対して2003年の張教授の論文よりずっと厳しい。

 北朝鮮は、数回にわたる人工衛星の打ち上げと称するミサイル発射実験によって、アメリカを攻撃できる核兵器を、本当に手にしただろうか。中国との国境からさらに近いところで地下核実験をやろうとすれば、それは確実にできることであり、北朝鮮は今年中にまた1、2回実行しようとしている。これはアメリカ、日本に対する示威行動というより、中国を恫喝していることは言わずもがなだ。飼い犬に手を噛まれかねない中国は、いまその対北朝鮮の戦略を変える時期に来ている。

Diamond Online 2013225

http://diamond.jp/articles/-/32438

(出典:2月25日付『ダイヤモンドオンライン』)