第6回訪中団(2017年8月25日~8月31日)

 「日中未来の会」の第6回訪中団は、2017年8月25日から8月31日まで、北京、河北省を訪れました。

 今年は日中国交正常化45周年の節目の年であり、訪中団は北京で中国社会科学院が主催した「中日国交正常化45周年記念国際学術シンポジウム」に参加。南村志郎代表は「中日民間往来と文化交流」のセッションにおいて報告を行い、近藤大博代表代行がコメンテーターを務めました。また関係団体との意見交換、中国を取り巻く国際情勢に関する研究者の講演、習近平政権が開発を進める「雄安新区」の視察など、日中関係を振り返り、未来に向け日中関係をいかに構築していくかを改めて考える旅となりました。

【in北京】

 ◆「中日国交正常化45周年記念国際学術シンポジウム」開幕式◆ 8月26日PM

「中日国交正常化45周年記念国際学術シンポジウム」の開幕式が26日、北京の人民大会堂で行われました。主催者側の中国社会科学院から王偉光院長、日本側から駐中国日本国大使館の横井裕大使が挨拶に立ち、唐家セン元国務委員・中日友好協会会長、河野洋平元衆議院議長・日本国際貿易促進協会会長、劉洪才元中央連絡部副部長・中国国際交流協会副会長、中谷元衆議院議員・元防衛大臣が基調報告を行いました。

開幕式には、上記の日中両国政府要人のほか、関係の政府機関、企業、民間団体、学者およびメディアの代表など約150名が出席しました。

中国側、日本側要人の発言について、人民日報(海外版)は次のように報じています。

「王偉光院長は挨拶で中日間の政治相互信頼の喪失や国民感情が希薄化している原因について、「一部の日本人が誤った歴史感を堅持し、中国の迅速な発展に正しい認識を持たず、国交正常化の初心を忘れて、両国関係の政治基礎を揺らいだ面にある」と指摘しました。

唐家セン元国務委員は『初心を忘れず、未来を見据え、中日関係の改善発展の新たな一章を迎えよう』と題する基調演説を行い、中日関係改善の推進について、「一、正しい認識を樹立し、政治相互信頼を高めること。二、未来を見据えて、矛盾と相違を管理すること。三、経済貿易協力を深め、互恵ウィンウィンを追及すること。四、友好交流を強化し、国民感情を高めること」の四つの努力すべき重点を語りました。

これに対し、河野洋平会長は『日中国交正常化45周年に際して』の基調演説で、両国民の人的交流における重要性を強調し、「日本に来た中国人観光客が帰国後、周りの人に日本の様子を伝える一方、より多くの日本人が中国に来て、日本では得られない中国の情報と発展ぶりを自分の目で見て、周りの人に伝えることが重要だ」と述べました。

開幕式では『中日関係の発展に関する中国社会科学院日本研究所の基本見解』が発表され、以下の6つの内容が含まれています。

一、歴史を正視し、未来志向的な中日関係を構築していくこと

二、原則を厳守し、相互信頼を積み重ねていくこと

三、経済協力し、ウィンウィンな関係を構築していくこと

四、往来を強化し、平和共存していくこと

五、共通点を求めて相異点を留保し、矛盾を解消すること

六、平等に付き合い、何代にもわたり平和を守っていくこと

◆「中日国交正常化45周年記念国際学術シンポジウム」◆ 8月27日 終日

8月27日に行われたシンポジウムでは、「中日民間往来と文化交流」、「中日関係は歴史から未来へ」、「中日経済発展と経済協力」、「中日地方交流と企業協力」の4つのセッションが行われ、日中両国の各界を代表する専門家や企業家等からそれぞれ充実した報告があり、活発な議論が行われました。

当会の南村志郎代表は、「中日民間往来と文化交流」のセッションで報告を行い、1956年に初めて国交のない中華人民共和国を訪問して以来、60年余り日中民間交流に携わった歳月を回顧した上で、①日中共同の歴史教科書を作ること、②日中関係の両輪の一つとして、民間の役割を強めること、③若者の交流を強化し、長期的な友人関係づくりを進めること、④問題が発生したときに一緒に相談できる場を作ることを提案しました。

またコメンテーターとして登壇した当会の近藤大博代表代行(日本国際情報学会会長)は、1980年代のいわゆる「日米経済摩擦」の際、日本での行き過ぎた報道が誤解を招いた事例を自戒も込めて紹介し、日中関係においても客観的な報道が重要であることを強調しました。

◆中国社会科学院の陶文釗・元米国研究所副所長の講演◆ 8月28日AM

陶文釗・元米国研究所副所長より、トランプ政権下の中米関係の動向、台湾問題、南シナ海をめぐる問題、北朝鮮問題、日米関係など、中国から見た国際情勢について詳細に説明いただき、国際関係の理解を深める貴重な機会となりました。

◆中国共産党中央対外聯絡部の王亜軍部長助理との座談会◆ 8月28日PM

今回の訪中団も、中国共産党の党外交を推進する機構である中央対外連絡部を訪問し、王亜軍部長助理他の出席者と、最近の日中関係の動きを踏まえ、民間の日中交流の在り方について意見交換を行いました。

◆中国宋慶齢基金会 井頓泉副主席との座談会◆ 8月28日PM

訪中団は、新たに建設された中国宋慶齢青少年科技文化交流センターを訪問し、幼稚園、国際体験館などを見学しました。中国茶道を紹介するスペースでは、中国の点茶の実演、日本の茶道との比較などの説明があったのに応え、当会の団員が日本の茶道を実演するなど、和気藹々の雰囲気の中で交流を深めました。

その後訪中団は中国宋慶齢基金会 井頓泉副主席と懇談。今後、日本を含め国際的な青少年交流を重視し、中国の青少年のレベルアップを図っていきたいとの基金会の方針の説明があり、日中未来の会と引き続き交流を深めていくことが確認されました。

【in河北省】

◆満城漢墓、保定直隷総督府などを参観◆ 8月29日PM

北京市から「雄安新区」に向かう途中、満城漢墓、保定直隷総督府などに立ち寄り、中国の悠久の歴史を実感しました。「雄安新区」のある河北省保定市では、前漢の中山靖王劉勝とその妻である竇綰の墓が発見され、全国重点文化保護施設に指定されています。また保定には、清朝時代に北京周辺を統括した直隷総督府の史跡が残されており、かつて保定がこの地域の中心都市であったことがうかがえました。

◆雄安新区を視察◆ 8月30日

雄安新区は北京・天津からそれぞれ約100㎞に位置しています。2017年4月に習近平政権がここを新たな経済開発区とすることを発表し、1980年代の深圳経済特区、1990年代の上海浦東新区と並ぶ国家プロジェクトとして位置づけられています。

今回、訪中団は雄安新区の弁公室が置かれている容城県を視察しました。現地には既にかなりの中央の国有企業の事務所が進出しているとのことですが、「千年計画」とも呼ばれている長期的なビジョンを検討中の段階にあり、第19回党大会が行われる2017年秋以降、新体制のもとで具体的な計画が本格的に立ち上がっていくものと考えられます。