第23回勉強会開催、「南水北調の現状と課題」

2月21日、第23回勉強会が開催され、前中国通信社社長の薛永祥さんから、「南水北調の現状と課題」をテーマにお話しいただきました。「南水北調」とは、北部の水不足を解消するために、水資源が比較的豊かな南部から北部に水を運ぶ中国の国家的プロジェクトであり、昨年12月、中央ルートの1期工事が完成して通水が開始されました。薛さんは、中国の公式報道からみた「南水北調」の現状と課題について紹介してくださいました。

「南水北調」の構想は、1952年、毛沢東によって打ち出されました。そして50年余の研究と論証を経て、2002年、東、中央、西の3ルートによる「南水北調」プロジェクトが始動します。40~50年間で3期に分けて工事が行われ、2050年までの総投資額は約5000億元に達するとされ、「計画50年、建設50年、投資5000億元」と称されているそうです。

実際の効果について、北京市の都市生活用水と工業用水に占める「南水北調」の水の割合は50%を超え、北京の給水保障率は大幅に向上すると予定されている一方、北京は今後も人口の急増が見込まれており、「南水北調」の水は人口膨張に呑まれることになるとの指摘もあります。

また、環境問題については、水質確保、生態系への影響が懸念されていますが、中国政府もこれには十分に配慮し、多額の資金を投じて適切に処置すべく取り組んでいるそうです。

この壮大な国家プロジェクトの行方について、今後も注視していきたいものです。

第22回勉強会開催、「私は中国が好き」

1月17日、第21回勉強会が開催され、山梨県日中友好協会理事長の神宮寺 敬氏から、「私は中国が好き」をテーマにお話しいただきました。神宮寺さんは、これまで多くの中国の若者をホームステイとして受け入れる等、進んで交流の道を切り拓いて来られ、中国の人達からも深く敬愛されています。

通信兵として日中戦争に従軍し、上海で終戦を迎えた神宮寺さん。まずは自らの戦争体験について語りました。「軍隊教育では『右向け右、左向け左』を徹底的に訓練された。当時はなぜこればかりをやらされるのかと不思議に思ったものだが、後になって考えてみれば、戦場で敵に突っ込んでいくためには自分の頭で考えていてはいけない。上官の命令を受けたら体が自然と反応する、そういった人間をつくるためのものであった。いま、このような教育は絶対に行ってはならない。戦争は地震や津波などの自然災害と違い、防げるものだ」と述べられました。

1980年代後半からは中国国際放送局(CRI)日本語部の研修生をホームステイとして受け入れてきました。「これまでたくさんの研修生を自分の『子ども』のようにして預かってきたが、これを通じて、日本と中国の生活・風習の違いを多く知った。そして、中国人の中にもいろいろな人がいて、いろいろな習慣があることを。人と人の付き合いは相手のことを知ること、尊重することが大切で、自分が良いと思ったことを押し付けてはいけない。」

神宮寺さんは毎年1回、家族といっしょに中国の「子ども」たちに会うために訪中しています。「中国の好きなところはどこかと問われれば、『みんな好き』と答える。中国を好きという気持ち、それと信頼関係、これが私の日中交流の根源。一本の絹糸も何本かとより合わせるとその数以上に太く強いものになる。これと同じように、私は家族、そして多くの人と糸をより合わせて太く強い日中関係をつくっていきたい。」と語りました。

勉強会のあとに開催された新年会では、2015年も日中関係は厳しいものになるだろうとの見通しが示されながらも、会員一人一人が一本の糸となってできることをやっていこうとの思いを新たにしました。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

第21回勉強会開催、「APEC後の中国」

12月20日、第21回勉強会が開催され、当会共同代表の南村志郎氏から、「APEC後の中国」をテーマにお話しいただきました。

まずは、APECの米中首脳会談で示されたとおり、米中関係は深く結びつき、前向きな関係になっていると指摘。「今後、日中関係は米中関係によって処理されていくことになるだろう」と述べられました。また、日本の外交が今のままの方針で突き進むと、日本はアジアの中で孤立するのではないかとの懸念を示されました。

経済については、中国政府が経済構造改革を推進するためのキーワードとして掲げる「新常態(ニューノーマル)」をめぐって解説がなされました。習近平政権は「新常態」という言葉を使って、高速成長に別れを告げ、中低速成長で経済の質を高め、持続的な安定成長を目指すとしています。これについて南村氏は、「中国の経済は危険な状態にあることを十分に認識しており、いま手を入れないと将来大変なことになるとの固い決意の表れだ」と指摘されました。

腐敗撲滅運動についても、大物が次々と捕まっているが、これで終わりではなく、まだしばらく続くだろうと見方を示されました。

第20回勉強会開催、「中国法を通して見た中国社会」

11月15日、第20回勉強会が開催され、上海での執務経験もあり、中国法務に精通する藤本豪弁護士から、「中国法を通して見た中国社会」をテーマにお話しいただきました。

まずは、中国の法制度、裁判制度、立法の歴史等について詳しいレクチャーを受けました。「中国の法律の規定は日本に比べて簡単・シンプルであるが、これは、国土や人口が大きく、多様な社会であることから、細かく規定してしまうと対応できなくなってしまうという事情がある。そのため、より包摂的なものになっている」との説明がありました。

裁判制度については、「地方保護主義」(地元の利益保護を不当に優先する傾向)や「執行難」(判決の執行が困難な状況)等の問題点について指摘されました。これは外資系企業にとって大きなリスクとして認識されているそうです。また、司法の独立については、共産党の指導を受けるという仕組み上、「司法の独立は難しい」と述べられました。

出席者からは活発に質問が出されました。先の四中全会のコミュニケで強調された「法治」とはどういったものかとの質問に対しては、日本でいう「法治」とは異なり、あくまでも共産党の指導の下での「法治」であって、共産党がつくるルールをきちんと守る社会にしていくということではないかとの見解を示されました。

※先月、藤本弁護士が執筆した『中国ビジネス法体系-部門別・場面別』が出版されました。興味のある方はぜひ手に取ってみてください。

第2回訪中団、北京・上海で関係団体と意見交換

日中未来の会の第2回訪中団が2014年11月1日から5日まで、北京・上海を訪れ、中国の関係団体との意見交換を行いました。

昨年の訪中とは逆に、今回はまず上海に入り、上海市日本学会、上海社会科学院日本研究センターと「日中関係の打開策を探る」をテーマにシンポジウムを行いました。また、上海都市計画展示館も参観し、ハイテクを駆使して展示された上海の変遷、未来像に圧倒されました。

上海での行程を終えた後は、高速鉄道で北京に移動しました。北京はAPEC前で自動車の走行規制が行われていたためかさほど渋滞に悩まされることなく、また、連日好天に恵まれ、まさに「北京秋天」そのものでした。

北京では、宋慶麗基金会副主席の井頓泉氏との座談会、中国国際友人研究会との座談会を行い、中国社会科学院元米国研究所副所長の陶文釗氏から中米関係についての講義を受けました。また、前回はなかった試みとして、北京大学の学生との交流も行い、中国の若い世代の日本や日本人に対する率直な意見を聞くことができました。

 

第19回勉強会開催、「市民運動について」

10月18日、第19回勉強会が開催され、元土井たかこ代議士秘書で、市民運動に長く身を挺してこられた五島昌子さんから、「市民運動について」をテーマにお話しいただきました。

土井氏が死去されたばかりであったこともあって、平和憲法や女性の権利を守るために戦い続けた土井氏のエピソードを、側近中の側近であった五島さんの視点から語っていただきました。

また、護憲や脱原発をはじめとするさまざまな市民運動に身を捧げている五島さんですが、市民運動については、「運動することで分かり合える、その積み重ねが大切」と指摘したうえで、「政治と市民運動をドッキングすることは難しい。どうすればいいのか」と問いを投げかけました。

これまで長く市民運動にかかわってきたものの、なかなか現状を変えられずにいることについて、自らの反省も踏まえて、「『大きく変えていく』という何か欠けているからではないか」と分析。「それでも『怒り』はある。これがある限りこれからも運動を続けていく」と力強く語りました。

第18回勉強会開催、「中国、食糧安保戦略の転換と世界への影響」

9月20日、第18回勉強会が開催され、農林中金総合研究所主任研究員の阮蔚さんから、「中国、食糧安保戦略の転換と世界への影響」をテーマにお話しいただきました。

中国は2013年、①主食用穀物(米と小麦)の「絶対的自給」、②主食以外の食糧(穀物、特に油糧種子)の不足分は輸入に依存する、という食糧安全保障戦略の転換に踏み切りました。これについて阮蔚さんは、これは96年に打ち出した「食糧の95%自給」戦略の全面見直しで あり、輸入を食糧供給の重要な柱として正式に位置づけた、歴史的転換であると指摘されました。

そして、主食穀物の「絶対的自給」を達成するために、「家庭農場」の育成に力を入れていることを紹介しました。「家庭農場」とは、家庭の労働力に頼り、兼業ではなく専業により、適正規模(出稼ぎ労働者に相当する収入を得られる経営規模)の農家を指すそうです。

これについて参加者から、「日本のように兼業化の道には進まないのか」との質問が出ましたが、「たとえば豚と米のように、複合化は推進されているが、兼業化ではない。中国の農業地域は日本のように近くに工場などの働き場がなく、兼業の条件がないため、一部の都市周辺は除いて、全体としてみれば、兼業化の方向には進まないだろう」と答えられました。

第17回勉強会開催、「『小さな留学生』から14年」

7月19日、第17回勉強会が開催され、張麗玲・株式会社大富社長から、「『小さな留学生』から14年」をテーマにお話いただきました。

張麗玲さんは1989年に来日し、大学院修後、日本の商社に就職します。そして商社での仕事の傍ら、日本で生活する中国人留学生の姿を記録し始めます。その一方、中国国営テレビ局CCTVの番組を日本で放送する「株式会社大富」を設立し、社長に就任しました。

2000年にフジテレビで放送された『小さな留学生』は大反響を巻き起こしましたが、当時、中国人が制作した作品が、日本の、しかも民放で放送されるなどほとんど考えられないことであり、放送にこぎつけるまでには言い尽くせないほどの苦労があり、大変大きなチャレンジであったそうです。しかし、日本での生活を通し、日中両国民の間に小さな誤解がたくさんあることを肌で感じていた張さんは、相互理解を促進するために映像の力は大きいと考え、必死の覚悟をもって日本での放送を貫き通します。

また、「株式会社大富」の経営も一筋縄ではいかない大変な苦労の連続でした。「自分が最も向いていない仕事は経営者」と語る張さん。日中のはざまで悩み、苦しみながらも経営を続けてきました。2012年からは日中2か国語放送も開始し、中国語がわからない日本人視聴者も、番組を通して「生」の中国を感じることができるようになりました。

最後に張さんは次のように語りました。「日中のはざまで生きるのは相当の覚悟が必要。日本と中国を本当に好きでないとできない。何があってもあきらめない、何があっても大丈夫という確信を持てるかどうか。これが大切であると思う」

張麗玲氏_20140719

 

 

 

 

第2回「日中関係シンポジウム」、民間交流の重要性を再確認

6月28日(土)、第2回日中関係シンポジウム「日中関係ーー現状と展望」が開催されました。昨年11月に開催された第1回シンポジウムに続くもので、今回も100人近くの参加者を得て、成功裏に幕を閉じました。

まずは、東京中国文化センターの石軍センター長および工学院大学孔子学院日の西園寺一晃学院長が基調発言を行い、その後、パネリスト5名の発言、討論があり、会場からも活発な意見が出されました。

パネリストは日中間の経済、観光、政治、教育、文化に精通した方々であり、それぞれの専門分野から日中関係の現状を語り、今後の展望を探りました。

最後に、司会進行を務めた日中未来の会の近藤大博代表代行から、今後の日中関係について、「悲観してもならないし、楽観してもならない」、「両国間だけでなく、世界のなかに位置づける」、「相手の立場を尊重して相互理解を深める」とのまとめがなされ、民間交流の重要性を再確認しました。

※シンポジウムの詳細レポートは後日掲載する予定です。

 

第16回勉強会開催、「転換期に立つ中国経済」

 6月21日、第16回勉強会が開催され、西園寺一晃・工学院大学孔子学院院長から、「転換期に立つ中国経済」をテーマにお話いただきました。

 西園寺さんは、中国の2014年1-3月期のGDP成長率が7.4%であったことについて、日本のメディアは「成長鈍化」と報じているが、中国経済は今まさに転換期にあると指摘。習近平・李克強体制はこれまでの歪みを背負いながらも発展しなければならず、痛みがあろうとも断固として改革を進めなければならないと述べました。

 いまの中国経済のポイントについて、①中国経済は転換期にある、②格差、環境汚染、腐敗の問題、③中国経済は世界経済の一部、④リコノミクスの最重要課題は「都市化」⑤金融改革が急務であると説明したうえで、一つ一つ詳しく解説されました。

 特に「都市化」については、大都市と農村の間に中小都市をつくり、農村部の余剰労働力を引きつけて工業やサービス業を発展させ、雇用や内需の拡大を図る政策であると説明。今後の中国経済のけん引役として、大きな注目を集めていると指摘されました。